首都機能分散は、法律まで出来ながら、一向に進まない。

どうして、こんな事になったのか?
原因は分かっている。
大企業と族議員と、天下り先を確保したい官僚の利益を優先しているからだ。
原発やダムのような巨大利権は、連中にとって舌なめずりしたくなるほど美味しい餌なのだ。
選挙資金を提供する者と、その金で当選して法案を提出する者と、法を執行する者が結託してしまえば、大概の事は出来る。
勿論、目先の利益に騙されて投票してくれる有権者がいることが前提だが。

もともと日本は、国民がせっせと金を稼いで行政がドブに捨てる国だと言われている。
金を無駄にするだけならまだ良いが、ドブに札束が詰まって汚水が溢れ出し、国中に腐臭と汚物が満ちている。

「真人、お盆の風習は何教が始まりか知っとるか?」
「仏教だろ?」
「違う。ペルシャゾロアスター教だ」
「何だ、そりゃ?」
「知らんのきゃあ?近代宗教はゾロアスター教に始まるだに。世界史で習わんかったきゃあ?」
「そんなマニアックなこと、学校じゃ教えんよ」
「ほうか。なら、教えといたろう。お盆はペルシャ語のウラバンが語源でな、日本に伝わって盂蘭盆になった」
盂蘭盆って、盂蘭盆会(ウラボンエ)のウラボンか?」
「そうだ」
「驚いたなあ」
「ウラバンにはな、ゾロアスター教徒は乾かした大麻の茎を焼いて迎え火にする。その煙をみんなで吸って、トランス状態になって死者の幻覚と交信するんだわ」
・・・・・
「英霊の無念とか、先祖の御霊とかいうのには散々騙されたでな」
「戦時中か?」
「ああ。連中を死に追いやった奴らが、その霊魂をネタに、次の人殺しをたきつけるで、戦争が終わらん筈だがや。一種のネズミ講式霊感詐欺だで、あれは」
「戦時中は、誰もそういう仕組みに気付かなかったのか?」
「よう出来た幻覚ほど、人間の潜在願望に甘く囁きかけるもんでよ。そういう仕組みが沢山仕込まれた社会ほど、一見良うまとまっとる。ええ例が地獄だがや。地獄もゾロアスターの発明品だが、うみゃあ仕組みを考えたもんだだわ。『悪いことすると地獄に堕ちる』と信じ込ませれば、犯罪は減る。どれだけ複雑な法体系を張り巡らしても、人間は必ず網の目を見つけてキリないが、その点、宗教的モラルなら、一人一人を内側から縛れるがや」
「ええことやないか」
「一見な。問題は、所詮人間が造った虚構だで、『悪いこと』がすぐに『教会の権威に楯突くこと』とか、『政府の方針に反対すること』にすり替わってまう。教典を自国語に翻訳する時に、訳者の主観が混じるから、同じ宗教でも、国によって別な教えになる。挙句は魔女裁判に宗教紛争だあ」

そもそも日本は、公共工事の九割以上に違法談合の疑いがあるのに、そういう根幹的問題に一向にメスが入らない国なのである。
小さな違反は犯罪だが、業界全体で行えば、社会システムになる。
これほどの不正が社会常識となっている国で、正義や道徳が定着すれば奇跡であろう。
建設業界だけではない。
秘書給与を党に寄付すれば逮捕されるが、公約を守らない議員は大手を振って議員を続けられる。
自衛のための軍隊を海外に出してしまうから、肝心の時に国民を守る自衛隊がいない。
収穫物でなく、植林や作付けに補助金を出すから、荒廃した人工林や農地が増える。
問診や触診・視診がタダで、高価な機械を使った検査ほど高保険点数に設定するから、いつまで経っても三時間待ちの三分診療・検査漬け医療から脱却出来ない。
親父の言うとおり、法律はうっかり網の目に引っ掛かる運の悪い人間は摘発出来ても、良心の欠如を指摘することができない。
いや、今の日本では、何が良心なのかさえハッキリしない。

六四年に原子力委員会が作成した原子炉立地審査指針の冒頭には、「大きな事故の誘因となるような事象が、過去にも将来にも考えられない場所」という条件がついている。
浜岡原発がこの条文に違反していることは、今や誰の目にも明らかだが、それでも誰も逮捕されることはないであろう。
日本のシステムは、こうした無数の無責任な空文で構成されている。
政治家は一部の利権者のために存在しても構わない。
役所の情報公開は肝心な部分を塗り潰して良い。
憲法は無視するのが当たり前。
お上とその癒着業者には都合良く、一般大衆には苛烈な社会。

沸騰水型原子炉というのは、簡単に言えば、格納容器という頑丈な密閉建造物の中に、圧力容器と呼ばれる巨大な圧力釜を納めた物である。
圧力容器の中に何万本というウラン燃料棒を立て、熱核反応で容器内の水(炉水)を沸騰させて、二百八十度、七十気圧ほどの高温高圧蒸気を作る。
燃料棒の周りには泡が付き、これが多くなると、核反応が不安定になったり、燃料棒被覆管の温度が局所的に上がって危険なので、再循環ポンプという巨大なポンプで常に炉水を撹拌している。
こうして出来た蒸気をタービン室に送って発電するのだが、使用済みの蒸気は強い放射能を帯びているので、普通の火力発電所のように大気中に放出することができない。
そこで、海水で冷やして水に戻し、再加熱してから圧力容器に返す。
冷却加熱に大量のエネルギーを使うから、熱効率がすこぶる悪く三十パーセント台である。
分かり易すく言えば、発電量百万キロワットの原発なら、だいたい二百万キロワット分の熱を海に捨てている計算になる。
ガスタービン発電が六十パーセント台の発電効率であるのに比べると、決して地球温暖化防止に役立っているシステムとは言えないのである。
さらに、ウラン採掘と精錬に大量の化石燃料を使うとか、ウラン鉱残土の環境汚染が大きいとかの問題もあり、決してクリーンでもない。
勿論、核廃棄物の問題もある。
廃棄物処理に要する費用を加えると安くもない。
世界的に反原発気運が高まってきたのは、そういう背景もあった。

電力関連機関が施行し、二〇〇二年一月一七日に発表した原発に関する全国世論調査がある。
こうした調査という物は質問の形式で結果が大きく変わるもので、「年金制度は必要ですか?」と訊けば、国民の殆どが「必要」と言うだろうが、「積み立て金を役人と癒着業者が浪費する、今の年金制度の維持を望みますか?」と問えば、役人と癒着業者以外、殆どの人は「否」と答える類のものである。
ところが、この電力機関が行った調査は、原発推進政策を実行する側が施行したにもかかわらず、積極的な推進を求める回答は僅か四パーセント、消極的推進派を加えても二十五パーセントに過ぎなかった。
ちなみに、「原発を減らすべき」と答えた人は二十九パーセントである。
「これ以上造るべきでない」と答えた人を合わせると、実に六十三パーセントが推進政策に否定的だった。
それでも、政府のエネルギー政策は変わらない。
こうした民意と政策の乖離はよくある現象で、高速道路、整備新幹線、ダム建設、赤字国債、海外派兵、多国籍軍加盟、改憲論議年金問題、多くは似たような構造だ。
数パーセントの利益集団が行政とその周囲に集まり、国や地方の政策を決めているとしか思えない現象が常態化している。
いったい民主主義国家の政策は誰が決めるか?
日本は議会制民主主義だから代議士が決める。
つまり、国民レベルでは二十五パーセントの原発推進派が、代議士のレベルでは過半数に急増していることになるのだ。
瑣末なことならともかく、国家の将来を決める重要な問題で、代議士が有権者の意志を代弁していないなら、それは、もはや民主国家ではあるまい。
まして、嘘の理屈で国策を決めている場合は、なおさらである。
本来、民主主義国家は有権者の意志による運営が基本であって、代議士の意志による国家ではない。
代議士制は、情報伝達速度の遅い時代に置いて、国民の意思を簡便に集める方法として便宜的に採用された制度に過ぎないのである。
現在ほど、情報の高速化が実現し、送金も携帯電話で出来る時代なら、国家のあり方を決める基本方針くらい、直接投票が可能なのではあるまいか?

「この国には、普通の国民を幸せにする仕組みが少なすぎる。代わりに政官財ヤクザを幸せにする仕組みには事欠かん。おかげで一般国民は、世界有数のGNPを稼ぎ出しながら、劣悪な環境に住み、ストレスに満ちた生活に疲れ、将来に不安を抱いて死んでいくんだ」

「軍部が好きに操れる国家神道が崩壊して、本当によかったと思った。宗教と狂信的な国家指導層が結びつくと、どえりゃあ恐ろしい。けどが、その後のモラル崩壊も同じように恐ろしかったわ。民衆のモラル崩壊より政治のモラル崩壊の方が激しかったが、政治家にモラルがにゃあのは昔からだあ。ゾロアスター教だ、仏教だ、儒教だ、神道だ、と言うては民衆を縛る道具に宗教を使うだけで、モラルが一番欠けとるのは、いつもお上なんだで、とにかく、宗教いうのは客観データがにゃあでなあ、為政者の好き放題だに」

参考HP(震災列島)
ある火山学者のひとりごと
PochiPress
作家でごはん