ナノゲートキャパシタが世界を変える?

 −従来の十倍のエネルギー密度を達成

 東京・昭島市にある電子顕微鏡などの電子測定機器メーカー、日本電子(株)がナノゲートキャパシタと呼ぶ、二次電池技術を発表して話題になっています。

 キャパシタというのはご存じのようにコンデンサのことで、電気回路には欠かせないものの容量がそれほど大きくなく、蓄電池としては一時的なバッファとしての用途しかありませんでした。

 この容量(エネルギー密度)を飛躍的に伸ばした電気二重層コンデンサを用いたウルトラキャパシタが開発されて、いろいろな場所で使われるようになってきました。
これまでのものは、6.5Wh/kgといったエネルギー密度で、ニッケル水素やリチウムイオンに比べて10分の1〜20分の1程度でした。
きわめて大型になってしまうため、実用性に問題がありました。

 それが今回のナノゲートキャパシタは50〜75Wh/kgとニッケル水素をしのぐものです(ちなみに鉛蓄電池は25Wh/kg程度)。
ナノゲートキャパシタの原料は基本的に炭素と紙とアルミニウムです。
ニッケルやリチウムのような資源的制約も少なく、電力貯蔵用システムに期待されているレドックスフローやナトリウムイオウ電池のように電解液も大量に必要とせず、また充放電を繰り返しても、過充・放電になっても劣化がなく半永久的に使えます。

 しかも充放電はほとんど一瞬に行われ、エネルギーロスが5〜10%と少ないのです。
このぐらいのエネルギー密度になると従来の二次電池の用途に使われていた用途はほとんどカバーでき、大容量蓄電システムにも道が開けます。
揚水発電所で行っている夜間電力の蓄電は、エネルギーロスが3割以上、これよりずっと高効率でしかも自然破壊をしないですみます。

 もう一つ私が注目してきたのは、自然エネルギーとの組み合わせです。
風力や太陽光のような発電方式は、天候によってどうしても出力が不安定になります。
そこでこのキャパシタをバッファとしてシステムに入れてやると、つねに安定した出力で電力が供給できるようになります。自然エネルギー利用にたいへん相性がいいのです。

 電車のように加速時に大きな電力を必要とする負荷に対してもバッファとして働かせれば、地域の電力供給を安定化させることができます。

 もちろん電気自動車、ハイブリッド自動車燃料電池自動車のバッテリーとしても最適です(すでにホンダのFCXはウルトラキャパシタを搭載しており、日産ディーゼルでもハイブリッドトラックに採用している)。
まさに夢のような技術ですが、日本電子では量産化をになってくれるパートナー企業を募集しているそうです。